肩(四十肩・五十肩)の話

 肩凝りや、10代・20代に多いインピンジメント症候群、中高年から増える四十肩・五十肩など私たちの生活において、肩のトラブルは切り離せないものです。

肩のトラブルも多いですが、肩という言葉も色々と比喩として使うことも多くあります。

皆さんが良く使う「肩が凝る」という言葉がありますが、実際に凝りを感じるのは大部分が首や肩甲骨の周りであって、肩に症状はありません。

肩に症状がなくてもなんとなく、肩が・・・と表現しますよね。

また、肩に関する言葉は、「肩身が狭い」や「肩の荷がとれる」などのように、身体的側面のみならず、心理社会的側面にも用いられます。日常において様々な意味を持つ肩ついて、正しい知識を身に着けることで日常生活において役に立つ場面がたくさんあります。特にトラブルが起きた際には、正しい知識で対処することで治療回復を助ける事が出来ます。

 肩は上腕骨と鎖骨、肩甲骨が連動して、1つのユニットとして動いています。

このことから、肩複合体と呼ばれます。

 難しい話になりますが、このユニットには、一般的な関節構造をしている3つの解剖学的関節と、関節構造はしていないけれど、関節の役割をはたしている2つの機能的関節という5つの関節が関わっています。

こうした複数の関節が関わっている肩関節はとても不安定な構造になっています。

また、不安定であるが故に、十分な可動性があるのです。

肩関節の可動性は十分ですが、不安定な肩を安定させるために、2つのシステムがあります。

静的安定化機構と動的安定化機構です。

 静的安定化機構は、エネルギー消費を伴わずに肩関節を安定させる機構です。関節窩の周辺に付着して上腕骨頭との適合性を高める関節唇(膝で言うところの半月板)や、関節中の関節液の表面張力などがあります。この関節唇は、関節周辺に唇のように付着している組織のことです。この関節唇は脱臼の防止に大きなかかわりを持っています。この静的安定化機構は、エネルギーを消費せず、体にとって効率が良い物となっていますが、動きを伴う状態での関節の安定化に対しては機能しません。

これに対して動的運動化機構は、動きを伴う状態で関節の安定化を図るシステムです。動的安定化機構は、肩の関節の安定に貢献する筋群のことを言います。具体的には、腱板筋と呼ばれる4つの筋と、力こぶを作る働きを生み出す上腕二頭筋長頭腱の5つで出来ています。肩の安定は、このような静的安定化機構と動的安定化機構で保たれています。四十肩・五十肩はこれらの筋が損傷した際などに起こります。

 主に40~50歳前後の中年の時期に見られ、痛くて肩が上がらないとする肩関節痛や拘縮を主症状とするものを、肩関節周囲炎といい、一般的に、四十肩・五十肩と呼びます。

 この五十肩には、腱板に起因する症状(腱板断裂・腱炎)や上腕二頭筋長頭腱炎、肩峰下滑液包炎、癒着性関節包炎など様々な病理変化を含んでいます。腱板筋という筋肉は、痛みや刺激にとても敏感です。そのため、腱板筋の反射性筋緊張が起こり結果として腱板筋の攣縮などを引き起こし、2次的に肩の痛みを強くします。

 五十肩や、腱板断裂、変形性膝関節症などは50歳以降に多く見られます。関節における疾患は、50歳を目安に増えています。その理由は明らかになっていませんが、慢性障害と同様の機序であると考えられます。慢性障害とは、繰り返し体に微力な外力が加わり続けた結果生じる障害です。これは、利き手、利き足が深く関わっていると考えられます。私たちは右手足と左手足を無意識に使い分けています。足に関しては、体を支える足と、ボールを蹴る足(=利き足)があります。利き足である方の骨盤は、利き足ではない方の骨盤に比べ、前方に傾き骨盤が水平ではなくなることがわかっています。骨盤が水平でなくなった結果、骨盤より上にある背骨や頭、肩甲骨などに影響があり体全体が歪んだ姿勢になります。このように体が歪んだ状態で動かすと、いつも微力なストレスを感じる部分、いつもあまり使っていない筋肉の部分、いつも関節の動きが少ない部分というように体に一定のパターンができます。この状態が長年つづき、さらに歳を重ねるにつれて筋肉の強度が低下していくとある年齢を境に慢性障害として症状が出てくることがあります。そのため、五十肩も50歳という年齢の時期に起こりやすいものになっています。

 肩関節周囲炎の病期は、急炎症期、凍結肩への移行期、凍結期の3つに分類されます。急性炎症期は、急性炎症期は炎症が起こっている機関で痛みが慢性疼痛化しないように、肩関節周辺機関のリラクゼーションを行います。しかし、過度な関節運動も疼痛を強めるため良くありません。凍結肩への移行期は、腱板筋の反射性筋収縮に注意しながら、拘縮治療と中心に行います。その後の凍結期では、ストレッチングや温熱療法によるリラクゼーション、拘縮治療を行います。四十肩・五十肩で大切なことは、痛みのある範囲でのストレッチは行わないことです。痛みが出る範囲でのストレッチは、組織損傷等につながってしまいます。二次的に癒着してしまう原因にもなります。そのため、ストレッチを行う際には、痛みが出ない範囲でのストレッチを行うことが大切です。

 難しい話になってしまいましたが、肩のトラブルの多くは、手指の使い過ぎや疲労の蓄積、微細な損傷の積み重ねです。そのため、手や腕に張りがあったり、痛みがあったりするようなら、早めに手や腕を休ませてあげて下さい。

 四十肩・五十肩になってしまうと、それこと数カ月~数年痛みと付き合わないといけなくなってしまうので。。。


横須賀市の整体『よこすか整骨院』
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